複数人での起業は、相互の強みを生かしながら、負担を分担して会社を運営していくことができるというメリットがあります。
しかし、共同経営にはいくつかの難しい点もあります。
経営を続けていくなかで、お互いの方針や理念が異なっていく可能性があること、場合によっては、「リスク」があるということを、はじめから念頭に置いておかなければなりません
まず、一番多くあるトラブルは、友人2人で会社を設立し、お互いに資本の半分ずつを出し合って(持ち株比率50%)けれど、しばらくして経営についての意見が合わなくなった場合です。
株式会社では、資本金を出す割合、つまり持ち株比率が多いほど権限が強くなります。
たとえば、持ち株比率が3分の2以上であれば、会社内のほぼすべての事項を決定することができます。
しかし、持ち株が50%ずつだと何も決めることができなくなってしまいます。
なぜなら、役員の選任、解任、報酬の決定などを行うためには、過半数の同意が必要だからです。50%ずつだと双方とも過半数を押さえていないため、どちらかが折れないかぎり何も決定できず、経営がこう着してしまうリスクがあります。
以上のことから、弊所では、最低限どちらかが51%所有している状態にすることをおすすめしています。
次に、役員の任期です。役員を変更する場合の、手間と費用を考えると、1人の場合は役員の任期は、長いほうがよいということになるのですが、共同経営の場合には、互いの意見があわなくなることがありますので、任期を短くしておくことを、弊所ではおすすめしています。
任期の途中でも、株主総会の決議(出席した株主の過半数)で、意見の合わない取締役を解任することができます。
しかし、正当な理由なく解任すると、任期の残りの期間の役員報酬などについて損害賠償を請求される可能性が出てきます。
残念ながら、意見に相違があることが「正当な理由」となることはあまりありません。
以上から、弊所では、複数で会社を経営する場合の役員の任期は、2年程度をおすすめ致しております。
友人が起業するにあたり、役員なることを頼まれること、あるいは名前だけ貸してくれと頼まれることがあるかもれません。しかし、軽い気持ちで役員に就任することはとても危険です。
役員に就任すると、役員としての法的責任が生じます。
取締役としての主な責任は、会社の利益に忠実な立場に立って職務を行うこと、善良な管理者としての注意義務を払って職務を行うことです。
また、役員としての責任は、単に会社に対する責任とどまりません。
株主に対する責任、従業員に対する責任、取引先など第三者に対する関係でも責任を問われ、会社の行った行為について、役員に就任したあなたにも損害賠償責任が認められ、お金を支払わなければならなくなることもあります。
役員に就任するときは、起業する仲間との信頼関係、自分がどのくらい役員としてその会社の業務にかかわるのかを、慎重に判断する必要があります。